「未知案内」


Bonsoir!ノタキラです。

投稿するタイミングを逃し続け、10月になってしまいました。

Netflixで、「弱虫ペダル」や「僕のヒーローアカデミア」を観ていて投稿に至らずです。Excusez-moi!

今回は、論文調の作品を書いてみました。では、Allez-y!

「未知案内」

誰かに場所を説明するのは、難しい。その場所の周辺にあるものを、まず相手が知らなければならない。サイゼリアを知らなかったら、おしまいだ。相手が庶民派でないことだけが判明しておしまいだ。

では、場所を説明するのがうまい人は、どのように説明をするのだろうか。

先ほど、特定の店、つまりは固有名詞なるものを使って場所の説明を試みたが、固有名詞というのが、場所を説明するのに効果的にも致命的にもなりうるとここでは伝えておきたい。説明がうまい人は、説明される場所を知っているだけでなく、説明される人の状況を知っているのである。

場所を知らずして説明できず。いわんや場所を知らんとするものをや。

案内上手は、物事のありさまを捉えるのが上手であり、もちろんその観察結果を言葉にするのが上手なのである。

とはいえ、彼らにも、突然知らない人に道を訊かれて、相手がどのような人物でどんなことを知っているのかわかりづらい時だってあるだろう。そんな時、彼らは水先案内人としてのプライドを賭け、どのように生き残りを図っているのだろうか。

聞いた話によると、そんな時はできるだけ抽象的な言葉を使うようにするらしい。何、抽象的な言葉なんてたいそうなものを使おうもんなら、たちまち混乱してしまうではないか、と思う方もいらっしゃるかもしれない。

しかし、彼らは抽象的な言葉こそ、通じる言葉だと強調する。どういうことか。説明が必要だろう。

例えば、

「マクドナルドが見えたら、右に曲がって歩いて、すき家が見えたら左に曲がってください」という表現があるとしよう。

それを達人たちは、このように翻訳する。

「ここから二つ目の交差点を、右に曲がってそのまままっすぐ歩いて行き、最初の信号のある交差点を左に曲がってください」

どうだろう。マクドナルドとすき家がそれぞれ「二つ目の交差点」と「最初の信号のある交差点」という言葉に置き換わっていることに気づくことだろう。これならマクドナルドやすき家を相手が知らず、どうしようもなく手詰まりになってしまうこともない。

つまり、抽象的な言葉というのは、上下左右前後、数字、一般名詞のように、育った環境に左右されることなく、現代人であれば誰もが持ち合わせている語彙のことなのである。くれぐれもリビドーやアウフヘーベンなどといった心理学用語、哲学用語の類ではないことを忠告しておく。

道案内は、相手にとって未知のものを教えるという点においても未知案内であり、案内する側からしても相手の頭の中は未知が多いため、想像力を働かせて、案内に挑むものとなっている。

道中不安な中、あらぬ方向に道案内されたものならば、不安増大、憎悪増長、犯罪増加と悪いことばかり起こるものである。

説明上手は、困っている人を助けるヒーロー・ヒロインであり、相手の状況に想像力を働かせる思いやりにあふれた人々なのである。

どうか道に迷っている人を見かけたら、話しかけないでいてほしい。
なぜかって?ー私が来た。

「未知案内」は、そんな感じ。

fin.

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